芋焼酎のお湯割りはうまい。
まずお湯を先に入れ、焼酎はあとから入れる。すると温度差で自然に対流がおきるので、そのままじっと待つ。かき混ぜない。
そして、そっと飲む。これがうまい。
お湯は熱い方が好きだ。そこに好みの芋焼酎をそそぐ。クセの強い芋焼酎だとなおのこと美味しく感じられる。
前もって焼酎と水を六対四ぐらいに割って、数日間寝かせておくことを「前割り」という。それを燗してから盃で飲むと、一段上のレベルになる。
前割りした芋焼酎はまろやかさがきわ立ち、単に割るだけとは段違いのうまさがある。
ただ作るのが少々億劫なこともあり、最近はもっぱらお湯と芋焼酎をその場で割る。
以前は週5ぐらいで馴染みの居酒屋に通っていた時期があった。ほどほどの常連として認識されてきた頃、大将が芋焼酎の一升瓶をキープさせてくれた。
嬉しかった。飲み方はもちろんお湯割りだった。
それも季節に関係なくお湯割りで飲んでいた。夏でもお湯割りである。なぜかと言うと、芋焼酎の一番美味しい飲み方はお湯割りであり、鹿児島の方は1年を通してお湯割りで飲んでいるらしいと聞いたからである。
そうなのか。そうなんだ。すぐに影響されてしまうのだ。
そこからお湯割りイキりが始まった。その馴染みの居酒屋も、えっお湯なの?と思っていたと思う。真夏でもお湯割りの客がいるのだから、面倒な客だったかもしれない。
鹿児島の方々が一年中お湯割りなのかは未だ分からない。ただ関東の片隅で、そして小さな居酒屋のカウンターで、一年を通して芋のお湯割りを飲むという、このイキり方が今となってはなんだか恥ずかしい。
今はお湯割りを飲む場所は「家」になった。この1年で酒の飲み方も変わってしまった。本当に激変した。
居酒屋の大将からお湯割りにぴったりな焼酎カップを頂いた。居酒屋に一升瓶のキープボトルと自分用のグラスがあったなんて、今思うと信じられないが、頂いたグラスは今でも晩酌の時に使っている。
暖かくなった。家で飲むお湯割りの回数は少なくなり、今ではソーダ割りか水割りが多くなった。でもいつかきっと鹿児島に訪れて居酒屋に入りたい。そして地元の人たちが芋焼酎をどのように飲んでいるかを伺ってみたい。
この1年間、季節とともに家で飲む酒もつまみも変わってきた。今はイキらない晩酌で芋焼酎を楽しんでいる。