Small Things

感じたこと、考えたこと

電車の中で文庫本を読んでいる人達それぞれの人生

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会社帰りに電車に乗り文庫本を読む。

この日は少し早かったので車内も混んでいた。ギュウギュという程ではないがまぁまぁの混み具合。こういう時は片手に文庫本を持ち、反対の手はつり革につかまる。混んでいる時は両手を下げずに上げる事を心がける。本のページが少しめくりづらいが、ぎりぎりなんとかなる。単行本の場合はさらに難易度が上がるが、右手をつり革から離してササッとページをめくるしかない。

大阪に出張で行くと電車が空いていることに驚く。大阪駅の環状線のホームには人がびっしりといるが、電車に乗るとそれ程でもない。会社帰りに環状線の駅で飲んでから梅田のホテルに帰る時も普通に座れることに驚いたりする。

今は毎朝6時20分ぐらいの電車に乗って出勤しているが、この時間でも座れることはない。夕方は夕方で結構な混み具合となる。ただ本だけは読みたい。本を読めるぐらいの混雑であればなんとか我慢できる。

しかし車内で本を読む人は本当に少なくなった。ある時7人がけの座席で6人がスマホを触っており、1人だけ前を向いていた。その6人はスマホで本を読んでいるのかもしれない。スマホやタブレットで漫画を読んでいるのかもしれない。スマホを触っている人の中で何人の人が本を読んでいるのだろうか。

隣の人のスマホ画面がチラッと見える時がある。Yahoo!かスマートニュースでその日のニュースを読んでいる人、あとはゲーム、動画を楽しんでいる人が多く、タブレットで新聞を読んでいる人もいる。Kindle等の電子書籍端末はどうだろうか。いやほとんど見かけない。たまに見かけると外国の方だったりする。日本で電子書籍端末を持っている人の絶対数が少ないのだと思う。

その夕方の電車の中でドアが閉まるタイミングでまたドドドっと乗ってきた。ドア付近をキープしたかったが、どんどん押されてそれどころではない。なんとか掴まれるところを探す。混んでいる電車で腕を下ろすのはいろいろな意味で危険である。まずは何かに掴まれる場所のキープだ。

そして前にいる女性も中央付近まで押されてきて、あたふたしている。手にはカバーを付けていない文庫本を手にしていた。おっ珍しいと思った。そして左前方から押されてきた男性がいる。手には文庫本を持っていた。えっ珍しいと思った。そして自分はAmazonからダウンロードして印刷したカバーをかけてある宮部みゆきの「火車」を手にしていた。風呂専用の文庫本になる予定だったが結局持ち歩いて読んでいる。

電車が動き出してから少し混雑具合にも余裕ができ、皆スマホを触り始めた。その中で紙の文庫本を手にした男女3人がページを巡り始める。カバーをしていない文庫本を読んでいる方の本は逢坂剛の小説のようだ。「カディスの赤い星」ぐらいしか読んだ記憶がないため他の作品は疎いのだが「燃える地の果てに」だったような、違うような、結局よくわからなかった。文庫にカバーをして読んでいる方はページ上部に作品名が書いてある文庫のようだったが、さすがにチラ見でそこまでは認識出来ない。

ただお二人とも文庫本の終盤部分に差し掛かっていた。ページ数残り2割ぐらい。もちろん読むピッチも上がってきている感じだ。よってお二人とも真剣であり、文庫本のページをめくるスピードも上がっている。一方自分の文庫本「火車」の方にスピード感はまったくない。まだ序盤部分全体の4分の1ぐらいであり、最初からどんよりとした展開であり読むスピードを上げていく必要もない。しばらくは遅読に徹する。

小説を読む人はやはり少ないと思う。よく小説は役に立たないと言われるけれど、じゃあビジネス書や自己啓発書はすぐ役に立つのだろうか。いや、そうでもないでしょ、と思う。小説は読んでいる間はその様々な世界に入り込むことができ、陶酔できる。たまたま電車の中で文庫本を手にした人それぞれが、その小説を通じて別の人生を経験し陶酔する。混んでいる電車の中で、いろいろと考えたり新たな自分を作り上げたりする。

あっという間に降りる駅に着く。そしてまた現実に戻っていく。

火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

  • 作者:宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1998/01/30
  • メディア: 文庫
 

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