Small Things

感じたこと、考えたこと

生方美久『いちばんすきな花』2話

まずアバンからの藤井風「花」の入り方にしびれた。それもイントロのみで歌なし。じらす。でもグッとくる。

ゆくえ、椿、夜々、紅葉に共感できるかというと、少しは寄り添えるものの、そこまでではないという気持ちで推移する。でもあったかもな、と昔を思い出す。自然と昔の自分を思い出させてくれる。そこがいい。自分だけ思ってることと違う、でもみんなに合わせる。それは中学・高校の頃はもちろん、社会人になっても普通にある。自分の意見は違うんだけど、今この場の空気を壊したくない、乱したくない、だから主張することはない。結局飲み込んでしまう。ただ飲み込まず普通に逆の意見を声高に主張する人もいる。でもその人たちは自分にとって苦手な人たちというグループに所属していく。

ゆくえ(多部未華子)は他人の感情を勝手に想像して勝手に傷つく。相撲大会のくだりで小さな子が大きな子に勝つ。周りは小さな子が勝ったことに対して、拍手を送り感動する。ただゆくえは、負けた大きな子に対して、心配して、勝手に傷つく。それはわかる、とてもわかる。でもその感情があったとしても、その場でそこまでは考えない、思わないような感じがする。あとから考えるかもわからない。よってそこまでゆくえに寄り添ってはいけない何かがある。

だからこそ、ゆくえは気を遣わなくていい人を求めている。その場で夜々(今田美桜)も気を遣わなくていい人が欲しいし、そうなりたいですと言う。そこは自分にもその気持ちがあるのは確かだろうし、でもそんな友達はいないのが現実なのだけど、じゃあ欲しいか、欲しかったのか、っていうと、どうなんだろう。そこまで欲しくはなかったのだと思う。

ゆくえも赤田(仲野太賀)が気を遣わない友人で、その関係性を求めている。でもそれは、いたらいたらで良かったと言えるのか。男性陣二人はそこで同意することなく、都合のいいひと、調子いい人って言われていた過去が語られる。その都合のいいひと、調子いい人に関してもちょっと思うことはあり、それは自分でその思いがあるのであれば、なんとか変えていけるのでは、と少し冷静になってしまう。それが出来ない二人というのもわかるのだけど。

そこから自分の居場所という話になり、紅葉(神尾楓珠)がゆくえに対して「そこだよ席、ゆくえちゃんの席、そこ」となってお菓子を置きあう展開となり、その流れは生方美久という作家の旨さがとてもよく出ていた。

でも結局、椿(松下洸平)が「どこに気持ちが向くかなんてそれぞれだし。言っちゃ駄目なことはたくさんあるけど、思っちゃ駄目なことはないです。」ということは的確であるものの、自分自身が飲み込んでいくつらさがあるよな、という気持ちが何度もループしてしまう。それは気の遣わない友達に吐き出すことで解決には向かわないような気がするのだ。

グループから、はぶられないように必死、という学生時代の生活はなかなかつらいんだろうな、ということは容易に想像できる。ただラストのバスの中でのゆくえと夜々のトークとなると、自分が男性ということもあり、そこまでの仲良しの儀式というものがイメージできない。

後だしじゃんけんからの藤井風。これは素晴らしいハマり具合であり、ゆくえの「あの2人」「椅子のこと席って言う人」という生方美久のパワーワードが締めくくる。

そんな気持ちのいいストーリーの中でも圧倒的に異質な役回りが相良(泉澤祐希)だ。ここまでひどい男を作り出す作家生方美久も凄いが、そこから出てくる「友達からで」「この子ね、顔がいいだけだよ」というパワーワードなのかキラーワードなのか、もうここまで徹底的にどうしようもないキャラクターを作り出した泉澤祐希のナチュラルな演技と生方美久のコトバはこれからも楽しみであり、ちょっとしたホラーでもある。