Small Things

感じたこと、考えたこと

電子書籍から紙の本に戻り本を自由に選び読書する日々

 今までずっと電子書籍で本を読んできた。Amazonのセールで色調調節ライト搭載のKindle Oasisまでも購入し、旧モデルのKindle Paperwhiteもまだまだ元気にモッサリと動いている。但し今は紙の本を読む事の方が多い。電子からまた紙へと戻ってしまったのだ。そして毎日本屋へ足を運ぶのがとても楽しい。出張や旅行で訪れるその土地の新刊本屋や古本屋を探索するのが、日々の暮らしの中に自然と組み込まれていき、それがとても心地良い。

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 僕は毎日Kindleのセール情報をチェックしており、きんどうキンセリのサイトは朝の通勤時にアクセスする習慣を継続している。おっ!文春の50%還元が始まった、おっ!講談社が始まった、ポイント還元じゃなくて50%オフがいいのに!おっ!今度は角川と早川か、という感じで、出版社単位の50%オフか50%ポイント還元セールが始まるのが楽しみでならなかった。そのタイミングで「なんとなく」電子書籍をずっと買ってきた。

 それらのKindle本はあくまで「なんとなく選んだ本」であり、今「一番読みたい本」「面白そうだと感じる本」ではなかった。というのも、いつの間にかKindleの本はセールの時しか買わないようになってしまったからだ。発売されたばかりの本や、新潮社、集英社、岩波書店のようにセールを行わない出版社の本は読みたくても買うことはなく「今読みたい本」より「今セールを開催している出版社でなんとなく選んだ本」がKindleの中に電子的に積み重なっている。

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 元々僕はミステリが好きで80年代後半から90年代にかけて島田荘司、逢坂剛、船戸与一、高村薫、宮部みゆき等を読み続けていた。ただ会社でそれなりの立場になるにつれ、一旦小説を読むのはやめ、ビジネス書、経済書、自己啓発書ばかりをかなりの期間読み続けた。ある著名な方が、小説なんてものは役に立たないし読んでいる時間がもったいない、という記事を真に受けて以来、きっと仕事に役立つだろう、ということだけを信じてビジネス書を読み続けてきた。

 ただ実際本を読んで、すぐ役に立つという事はあまり無い。それと自分が興味を持っていない本を読む事がどうしても多くなり、徐々に本を読む機会が少なくなっていった。そこで、僕自身既にある年齢まで達したこと、そして今後老眼が進み本を読む事さえも億劫になりかねないと思い、ビジネス書や経済書にこだわることなく、今自分が読みたい本を読む、面白そうだなぁと思う本を読む、読む本は自分で決める、という当たり前の本の読み方をしようと思った。

 しかしKindle本はセールの時だけ買うという習慣は未だなおらず、結局「今読みたい紙の本を買う」という謎展開となった。それがきっかけとなり、数十年ずっと読んでいなかったミステリやサスペンスの新刊を読み、興味のある文芸作品も読むようになった。これがすごく楽しい。

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 平野啓一郎氏は「本の読み方 スロー・リーディングの実践」という著作の中で、遅読を提唱し「量」より「質」を重視した読書をすることで、5年後、10年後にも役立つ教養が授かり、人生が豊かになる」と書いている。また「読書は何よりも楽しみであり、慌てることはないのである」という言葉は胸にささる。また森博嗣氏の「読書の価値」の中では、「速読は読書ではない」「とにかく、本は自分で選べ」「人が読んでいるものを避ける」と書かれている。どちらも厳しい指摘ではあるが、それが本を読むことの本質なのかもしれないし、今の自分のスタイルに合っている可能性もある。

 ただ、今一番の問題は読み終えた新刊の単行本がどんどん部屋にたまっていくことだ。積読ではなく、読了本がたまっていくのでそこまでの罪悪感は無いのだが、部屋のスペースが本によって圧迫されていくのはジリジリと辛さが増す。森博嗣氏は「僕は文庫本や新書は読んだらそのまま捨てることにしている。これは、今でもその習慣である。」と言い切る。理想の読書体験にはまだまだ辿り着かず、僕は日々もがいている。

 

本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP新書)

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読書の価値 (NHK出版新書 547)

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