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感じたこと、考えたこと

役者陣が大変素晴らしい~プレオム劇『脚光を浴びない女』

下北沢のザ・スズナリで『脚光を浴びない女』を見てきた。

プレオム劇という女性ユニットによる作品。中島淳彦作、福島三郎演出による再演。出演者の年齢層は幅広く総勢10名。

プレオム劇

舞台は築50年の立ち退きが迫る団地の一室。セットも秀子(小林美江)が住む部屋が作り込まれており、そこに団地の住人や秀子の母てる(矢野陽子)等が入れ替わり立ち替わり登場する。

会話のテンポがよく、終始面白く見ることが出来た。全体的にはとてもよくできたプロダクションだと感じた。

何より出演者が生き生きと演じられる脚本であることは間違いなく、その楽しさ、心地よさを観客側も感じ取ることができる。

根幹のテーマは夢と希望だと思うのだけど、そこまで一人一人の思いは描かれない。挫折、痛手、古傷もあまり深くは追及しない。

また現在日本が直面する団地の高齢化と老朽化という問題も主題として扱ってはいるが、独居老人が増え、外国人との共生という団地をめぐる難題まで提示することはない。

そのように敢えて真理の深堀りまではしないことで、舞台が重い雰囲気にはならないのだが、課題に対する着地点が明確ではないため、どうしてもその真意を測りかねる気持ちは残ってしまう。

一方役者陣の熱演は大変素晴らしく、大ベテランの矢野陽子、大西多摩恵、宮地雅子の凛々しい存在感と気迫あふれる演技が目を見張る。

キャスティングはその人しかいないと思われるほどぴったりで、優れた技量を持つ役者を生かす台本なのだと思った。

今回はザ・スズナリの最前列ベンチシートだったが、舞台を見上げる席の限界も感じ、腰の痛さも感じ、なかなかハードな観劇体験だった。

ただ少し実体験とも重なる場面が終盤にあり、突然自分の目から涙が出てきて驚いた。

プレオム劇プロデュース第4回公演 『脚光を浴びない女』
2021年10月16日(土)〜20日(水)
下北沢ザ・スズナリ

 

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