ミュージカル『October Sky -遠い空の向こうに- 』を見てきた。
原作はNASAのロケット技術者であるホーマー・ヒッカム・ジュニアによる自伝小説で、1999年に映画化されている。
1957年米ソ冷戦時代のアメリカ・ウエストバージニアの炭鉱の町コールウッドが舞台。スプートニクショックをきっかけにホーマー(甲斐翔真)はロケットを自らの手で作りたいという夢を抱くようになる。
仲間のロイ(阿部顕嵐)、オデル(井澤巧麻)、そして科学の知識に長けているクエンティン(福崎那由他)とともに一意専心突き進んでいく。ただホーマーの父ジョン(栗原英雄)はそれを快く思っていなかった…
基本的にこのホーマーと父ジョンとの障壁がずっと描かれていくので、最後にはお互い分かり合えるんだろうなということは最初からわかる。
ただ台本がいいためかストーリーがスムーズに流れていき、想定された客層とはまったく異なる私が見ても、突然行くと決めてコクーンシートを取った私が見ても、楽しめるつくりになっていた。
歌はベテラン勢が良かった。ミス・ライリー(夢咲ねね)、ジョン(栗原英雄)、ジョンの妻エルシー(朴路美)の安定感は素晴らしく、たっぷりとその歌声を聴くことができた。胸がすくほどダイナミックかつドラマチックな歌声は実に心地良かった。
渋谷のシアターコクーンという劇場は「コクーンシート」という2Fのバルコニー席があり今回は敢えてその座席を購入した。斜め上から見下ろすため、まず手すりが邪魔、そして舞台のすべてが見えない、というなかなか高難度の席である。
ただコクーンシートは安い。ほぼS席の半額である。1列しかないので前にも後ろにも人がいない。見にくい席だが、いいところもあるというシートである。
椅子に寄りかかると舞台半分が見えなくなり、目の前に手すりが視界をさえぎる...でもまぁこの値段ならと我慢できる。
双眼鏡は必須だと思うが、8倍でも十分だった。純粋な芝居だとさらに鑑賞難易度は上がるかもしれないが、ミュージカルであれば歌声重視、演奏重視ということで、コクーンシートでもまずまずだ。
突然思い立ってコクーンシートで見たミュージカルだったが、2階横から見下ろし、舞台もよく見えないことから、演者や観客との一体感は生まれない。
ただ双眼鏡片手に冷静に楽しめる新たな趣味を見つけたような気がした。