Small Things

感じたこと、考えたこと

自作カセットテープ「Night Life」とドライブの思い出

輸入盤レコードを探し求めて渋谷の宇田川町まで買いに行ってた頃、丁度LPからCDへと変わっていく時期だった。だがその時のCDは高かった。そしてAAD、ADD、DAD、DDDといった謎の表記に一喜一憂し、その後CDがLPを猛追していく。

でもまだまだCDプレイヤーは高価であり、アナログレコードを追い求める日が続いていた。特に価格面やシュリンク・フィルムの輸入盤レコードに魅力を感じ、レコードショップに通い続けることになる。ジャンル的にはSoul/R&Bのレコードを探しに、CISCO、Manhattan Records、タワー、レコファン、Pied Piper House、ハンター等に行くこと自体が楽しかった。

もちろんネットもスマホもない時代である。情報はレコードショップ、ラジオ、雑誌、そしてテレビではピーター・バラカン氏のザ・ポッパーズMTVぐらいだっとと思う。だからかなりの頻度でレコードショップに行き、自然と音楽ばかりの生活になっていく。

ただ当時、彼女が聴く音楽は邦楽だった。J-Popという言葉も存在しない時代、そこにはフォーク、ロック、歌謡曲という邦楽ジャンルがあった。その中でも彼女はチューリップのファンだった。あとオフコース、来生たかおだったような記憶がある。もちろんこちらは洋楽中心であり、Soulであり、R&Bであり、たまにRockである。

そこでなんとかこのSoul/R&Bの世界を知って欲しい、Soulミュージックを彼女と共有したいと思った。そして何を考えたのか、急にお気に入りのSoulミュージックをレコードからカセットテープに落とし、自作のオムニバス・テープを作り始めた。タイトルは「Night Life」...えっ…恥ずかしい、実に恥ずかしい。その意味すら良く分からないが、NightとLifeの間にスペースのある「Night Life」である。夜の人生、夜の生活という意味で付けたのだろうか。記憶にない。でも当時の僕は真剣だった。

LPからカセットにダビングする時、安いオーディオシステムだったからか、曲と曲の繋ぎ目にブチっとしたノイズが入る。これが実にカッコ悪い。だからやり直す。何度でもやり直した。でもどうしても消えないブチっもあり、かなり落ち込んだりもした。

当時の車は日産のリベルタビラ(LIBERTA VILLA)だった。カーオーディオはもちろんカセットデッキである。そこに自作オムニバステープの「Night Life」を入れてドライブをする計画だ。いや彼女はチューリップや来生たかおが聴きたかったのだろう。でもドライブの時は「Night Life」なのだ。雑誌FM STATION付録の鈴木英人氏によるカセットレーベルに身をまとった自作オムニバステープ「Night Life」、それこそがドライブ・ミュージックなのだという謎の信念を持っていた。

まず当時はTabu Recordだった。Jimmy Jam and Terry Lewisが最先端だったのだ。The S.O.S. Band, Alexander O'Neal, Cherrelleでカセット前半を攻めることが当たり前だと思っていた。

そして必ず入れたかった曲がこのChampaignの「This Time」という曲だ。ここが前半のクライマックス。当時はそう思っていた。そう確信していた。ふと彼女を見る。完全にヒマしている彼女がいた。ボーッとしている。スマホもなにも無い時代。無言で助手席の窓から外を見ていた。実にヒマそうに…

ラストはアイズレーのこの曲である。もちろん英語なので彼女は何を歌っているのかは分からない。いやそれでいいのだ。洋楽とはそういうものだ。ふと彼女を見る。助手席で寝ていた。完全に寝ていた。とっくに飽きてしまい、もう寝るしかなかったのだろう。

そして時が経ち僕は海外勤務になった。

ある時たまたま入ったダイナーの店内にBetween the Sheetsが流れていた。それはアイズレーの曲ではなかった。後で調べたところFourplay(Bob James/Lee Ritenour/Nathan East/Harvey Mason)のカバーでChaka Khanが参加しているようだ。レコードショップでCDを購入し毎日聴いていた。そして次のオムニバステープのラストは、このFourplayのBetween the Sheetsにしようと決めた。車の中で暇そうにしていた彼女の顔をふと思い出した。

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by ホンダアクセス