
Margo Guryan - Take a Picture (1968)
ニューヨーク生まれのマーゴ・ゲーリアンは、59年にレノックス・スクール・オブ・ジャズでオーネット・コールマンらと学んだ。彼の「ロンリー・ウーマン」に歌詞を付けた人でもある。そのジャズ畑の作曲家が当時ただ1枚残したこのアルバムを聴いて、ジャズの耳を持つ人がポップスを書くとこうなるのか、と静かに驚かされた。
ピアノやギター、ベースとドラムスに、フルートやオーボエが控えめに重なる。どの曲も2分半前後で、サウンドは軽やか。ささやくようなヴォーカルも甘い。だが、コードの動きは一筋縄ではいかず、明るいメロディーが途中で思いがけない方向へ転がっていく。可愛らしいのに、少しも凡庸ではない。
ビーチ・ボーイズ『ペット・サウンズ』に衝撃を受けてポップスに転じたという経緯を知ると、ブライアン・ウィルソンへのニューヨークからの返答にも思える。「Someone I Know」にバッハの「G線上のアリア」と「主よ、人の望みの喜びよ」が溶け込んでいるのも面白い。ツアーを拒んだために当時はほぼ黙殺され、評価が進んだのは00年の再発以降。声高に主張しないこの歌集が30年以上眠っていたのは、そのつつましさゆえかもしれない。