もう元の生活には戻らない。
これはなんとなく誰もが気づき始めている。ただ、もしかしたら以前のような生活に戻るかもしれない、というささやかな希望もある。
でも、それはおそらく無いんだと思う。だからと言って、元の生活にはもう戻らないと人は敢えて口にはしない。
もう東京都の感染者が毎日200人を超えても、今後300人を超えたとしても、政府や都としては基本的に特に対策はせず、ノーガード戦法でいくのだろう。観光庁は「Go To トラベル」事業を7月22日から実施すると発表している。
今旅行に行きたいか
たださすがに今、そこまでして旅行に行きたいかというと、なかなかそのような気持ちにはならない。今まで旅行は年に2~3回ぐらいは行っていたと思う。これからもずっと旅行に行くことが出来ないのであれば、それはとても寂しいと思う。でも今は仕方のないことだとあきらめるしかない。
そもそも今の時期、観光地の方に歓迎されないような旅にはあまり行きたいとも思わない。東京、神奈川、埼玉、千葉の人には観光地としても、あまり来てほしくはないだろう。その中でいくらGo Toキャンペーンだからと言って、なんとしてでも行く、という選択肢が自分の中には無い。
でもワクチンが開発され、予防接種が受けられる時が来れば、旅行にも行けるようになるのだろう。そして元の生活に戻る可能性だってある。ただ新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスやHIVウイルスと同じように、「DNA」ではなく「RNA」を遺伝子に持つウイルスであり、その場合効果的なワクチンを作るのは難しいとのことだ。
となると早期に出来る可能性もあると報道されていたワクチンの開発も、ウイルスの遺伝子が変異していくのであれば、しばらく、いやずっと出来ないと考えていた方がいいのだと思う。だとしたらもう元の生活には戻らないんだと気持ちを切り替えていくしかない。
あきらめること
だからもう旅行は無理なんだろうと思う。今まで沖縄には年数回訪れていた。だから今後いくことが出来ないとなるとさすがに残念なのだけど、もう仕方ないとあきらめるしかない。
あと夜の街関連の自粛も、ずっと続いていくのだろう。そもそも夜の街での外食は控えるようにと会社から要請が出ていることもあり、もう夜に外食をすることは無理なんだろうなと思う。
たとえば居酒屋での一人飲み。カウンターで一人座って特に話すことはせず、本を読みながら一杯やる。そして季節を感じさせる旬のものをつまむ。これすらだめなのか、と思う時もある。
もしその店で感染者が出た場合、カウンターで飲んでいた自分も濃厚接触者となる可能性がある。そうであれば、やっぱり一人飲みも難しいかもしれないなとあきらめている。長年続けてきた楽しみがひとつひとつ絶たれていく。
変化を楽しむ生活へ
でもこれからは今までとは違った、少しだけ変化のある生活を楽しむことが大切なのだと感じている。旅行や夜の会食はもうできないかもしれないけど、それらに固執しないちょっとした変化を見つけて楽しんでいく。
旅行が出来ないのであれば、自分の住んでいる街を調べて、今まで行ったことのない近くの場所を訪れる。そして知っていたけど行かなかった店や新しい店に休日の昼間に行ってみる。古本屋を探したり、中古レコード屋を探して、面白そうな本やレコードを見つけ出す。
老後じゃなくて今やる
今まで老後の楽しみ、という言葉で表現してきたものを、前倒しでやる機会が出てきたのだと考える。老後に小説を書こう、老後に全集を読破しよう、老後に名作映画100本を観よう、老後に帝王マイルスのCDをすべて聴いてレビューしよう。
いや、老後になんか絶対やらないと思う。最近特にそう思う。やるなら今なのだ。思いついたときにやるべきなのだ。老後に小説なんか書けるわけがない。書くなら今しかない。川端康成や向田邦子の全集を読むなら今。映画を観るのも今。マイルスを聴くのも今なのだ。
旅行や夜の一人飲みはもう出来ないかもしれない。だからこそ「あとでやる」「時間ができたらやる」「老後にやる」なんていう甘ったれた考えを捨てて「今やるのだ」と決心する。でも人はいつだって時間がない、忙しいと言い訳をする。でも時間はつくるものである。
時間を作って今やる
ゆったりとした環境、しっかりとした余裕、たっぷりある時間、そんな中で何かを書いたり、読んだり、観たり、聴いたりしても何も残らない。そのような環境では成果は見いだせないと思うのだ。
今まで冗談半分で「老後に」なんて言っていたことを反省し、今こそ時間をつくってやる。それがこれからの新しい生活なのだと最近思うのだ。