家で飲む。もうそれしかない時代である。
空きっ腹で飲む
しかしずっと晩酌をすることになるとは思わなかった。自粛当初は戸惑いもあったが、普通に夕飯を食べながら酒を飲むと考えれば、特に珍しいことでは無いのかもしれない。そう考えるようになってきた。
酒を飲むのであれば、何か食べてから飲む方がカラダにいいのかもしれないが、やっぱり空腹で帰ってきて、シャワーを浴びて、ビール(いつもは麦とホップ)を飲む。すきっ腹にビールを流し込むのがいいのだ。
確かに若い頃はまず食べてから飲む、なんて事もやってきたが、そのプロセスを踏むことはもう難しい。何かを食べた後に飲む酒は、なんとなくキレがなくなり、ぼんやりとした印象になる。やっぱり空腹状態の時に飲むから酒は旨いのだ。
地元の居酒屋で飲んでいた頃
最近は居酒屋に行くことが絶たれている。よって会社帰りは家に直行する。世の中のお父さん達のほとんどはこれが普通なのだと思う。でも今まではどこか居酒屋に寄り、クールダウンしてから帰ることが日常だった。
同僚を誘って飲む時も楽しいのだけど、会社近くで飲むと帰るのが億劫になってしまう。酔いが回っている時に、ギューギュー詰めの電車の中でじっとしているのはツライのだ。
ではどこで飲むかというと、会社から最寄駅まで一気に帰ってきて、地元の居酒屋で飲むのである。少し歩けば自宅である。でも最寄駅に着いてから飲むのである。いや正確に言うと、今は自粛しているが、以前はそれが普通だった。
歩いて帰ることができる駅まで帰ってきてから飲む酒は妙に安心感がある。落ち着いて飲むことができる。居心地の良さは家から近い飲み屋が一番だ。
一人飲みの自粛
でも今は夜に居酒屋で飲むことはできない。できなくもないけど今は控えている。こればかりは仕方がない。もうどうしようもない。
でも一人飲みであれば大丈夫かもしれない、という思いもある。カウンターに座って、一人飲むだけである。たまに主人や女将と話すかもしれないが、大きな声は出さずに、場合によってはマスクをすればいいのである。
ただ、もしも、もしも、自分が感染してしまうか、その店で感染者が出た場合に濃厚接触者となるか、どちらかの可能性は存在する。可能性なんて言ったら毎日の生活の中でいくらでもあるのだけど、夜の街関連での感染、濃厚接触はなかなか世間的にも許されない状況である。
食べながら飲む
この日はちゃんと「食べながら飲む」というテーマに挑んでみた。空きっ腹にビールや焼酎を飲むのがカラダによくないのであれば、じゃあ食べながら飲もうじゃないか、ということである。
しかし酒を飲む人間はご飯を食べてはならぬ、ラーメンを〆に食べてはならぬと説教する人たちがいる。太るぞ、太るぞ、太るぞ、とこれ見よがしに上から言ってくる。一方で酒を飲む前には何か軽く食べておいたほうが、カラダのためにはいいよと説教する人たちもいる。
みんなお説教が好きなんだなと思う。そんな人の事ばっかり気にしないでよ、とも思うのだけど、まだ言ってくれる人がいるだけいいのかな、と冷静沈着さを装ってみる。
チャーハンと黒糖焼酎
そこで様々なお説教に対して対抗すべく生み出されたのが、チャーハンと焼酎という組み合わせである。チャーハンをつまみながら焼酎を飲む。ただそれだけである。
焼酎は黒糖焼酎がいい。もちろん黒糖焼酎は糖質ゼロの酒である。そして必ず水で割る。炭酸で割ってもいいのだけどお腹が膨れてしまう。ロックで飲むのは休前日限定と決めている。
チャーハンをつまみながらであれば、焼酎を飲むペースも自然と落ちるしも、カラダにもやさしい感じになる。一気に酔う、一気にお腹がいっぱいになるという無謀なことにはならない。
そして、チャーハンの油、卵、ネギが、冷たくキリッとした黒糖焼酎によく合う。そしてチャーハンもその内冷めてくる。この冷めたチャーハンが実に旨いのだ。
冷めたチャーハンの実力
冷めたチャーハンはご飯ではなく、完全なるツマミである。これは居酒屋で飲んでいたのでは、なかなか気が付かない。いま、家で飲むしかないからこそ、安くて、(おそらく)健康的と思われる、チャーハンと黒糖焼酎の組み合わせが妙にしっくりくるのだ。
でも酒と炭水化物の組み合わせはどうなのか、一番だめな組み合わせじゃないのか、とまたお説教される可能性はある。その時はもう「そうですよね、すいません、気をつけます」と言いながら、真面目な顔をして、黒糖焼酎を飲みながら、チャーハンをつまみ、ふふっと笑うのだ。