出張の時はその土地の居酒屋に行く。
部下にも仕事があるし都合もあると思うので、タイミングがあった時に飲みに行く。都合が合わなければ一人飲みで居酒屋やバーを探索する。部下と飲む時は一次会もしくは一軒めで解散するようにしているので意外と早い時間に終わることが多い。そのあと一人でもう一軒行ってもいいのだけど、やっぱりホテルで飲みなおすか、となることの方が多い。
コンビニに寄るとまずは炭酸…うん、あるな、と横目で確認しつつ酒コーナーに向かう。缶ではなくボトルコーナーに向かう。ブラックニッカのボトルを手に取るはずが、なぜかメーカーズマークを買い物かごに入れてしまう。あれば絶対ジャックに手が伸びると思うが、ジャックダニエルのミニボトルを置いてあるコンビニは意外と少ない。しかしジャックにしろメーカーズマークにしろ、ブラックニッカとの価格差にはいつも愕然とする。ただ出張という謎のバイアスがかかり「ま、たまにはいっか」という安易さに対して自責の念にさいなまれる。この小さいボトルは200mlなので、一杯40ml入れたとしてこのあと5杯も飲むのか、という問題も残る。でもいいのだ。持って帰ればいいのだから。毎回悩むこともないのだけど、一応一人悩んでいるふりをする。
ホテルにチェックインする前に駅の本屋に寄った。
出張の時はその土地の本屋で文庫本を買う。当たり前のように本屋を探し、当たり前のように買うのである。なぜ出張の時に本を買うのだろうか。別にあとでAmazonで買えばいいのだけど、行ったことのない本屋を探して訪れること自体が好きで、店内をゆっくりと歩き、気になった本を手に取って、パラパラとめくって、あらすじをおおよそ確認して、じゃあ読んでみようかな、という気持ちで買うことになる。この時「あとがき」は読まない。この本屋におけるプロセスが好きで、結局買うことになってしまう。
そして1冊だけ買えばいいのだけど、3冊もレジに持っていってしまうのは、もう「勢い」である。出張の時なので荷物も普段に比べると多いし、本なんて一度に1冊買えばいいのだけど「勢い」だけで3冊買う時もあることを改めて認識する。それも海外ミステリー、海外エンタメ小説を買うことが多い。いや、今日じゃなくてもいいでしょ、という正論が頭をよぎるが、こちらは酔っているので「勢い」だけはある「勢い」に満ち溢れている。それが実に厄介だ。
メーカーズマークを飲みながら、気になった本を読み始める。特にロバート・ベイリーの2作目「黒と白のはざま」は楽しみだ。ただそうは言っても海外ミステリーということもあり、すぐにウトウトしてしまい、なかなか頭の中に入ってこない。出張の時のホテルで飲み直しながらの読書なんてたかが知れている。大体そんなもんである。文庫本は明日の移動の時に読めばいいのだ。でも読むのは1冊である。しかしなぜ3冊も買ってしまったのだろうか。そんな思いがループしていく。
しかしメーカーズマークのソーダ割りは旨いな、といつも思う。そしてウトウトしながら本を読み続けた。