Small Things

感じたこと、考えたこと

人生を慎重に生きるためのリストに追加すること

朝セブンイレブンでコーヒーを買う。

「キリマンジャロのLをください」と言ってnanacoで支払う。セブンのキリマンジャロはプラス10円で「なんとなくキリマンジャロ」が味わえるのがとても気に入っている。そしてまたお昼前にもう一度キリマンジャロのLを買いに行ったりする。

実はコーヒーを買うという行為だけで少し慎重になる。まず支払いがなぜnanacoかと言うと、iPhoneでセブンアプリとPayPayを連続して出すのが少し手間取るからである。クーポンを使う時は、あらかじめPayPayの支払い画面を出し、セブンアプリで会員コードとクーポンのバーコードを出して、さぁ行くぞと意気込んで、画面遷移をしながら会計にのぞむ。さすがに少し面倒だなと思う。

キリマンジャロのコーヒーに蓋をする時も慎重になる。最近はてのひらの中で蓋をつかみ、包み込むように蓋をするとパチっとハマる事が分かった。自分にとっては世紀の大発見なのだが、特に人に言う機会は今のところない。ただ後ろに人が並んでいたり、横に人がいると余計慎重になって蓋を閉めることになる。世紀の大発見も緊張すると手元が震えるだけだ。少し面倒だなと思う。

そしてコーヒーを持ちフロアのドアを開けたら、なぜかコーヒーが下にドスンと落ちてしまった。音も確かにドスンという重たいものが落ちた時の音だった。買ったコーヒーを落としたのは人生で初めてのことだ。でも蓋をしていた事もあり被害は最小限。一旦机までコーヒーを置きにいき、そのあとコーヒーを落としたところまで戻って床を拭いた。

ある時セブンのコーヒーにミルク(コーヒーフレッシュ)を入れようと、あの小さいミルクの蓋を開けた。その瞬間いきなりミルクがパーっと飛び散った。コーヒー周辺にミルクが飛び、手がミルクまみれになり、被害もなかなのものだった。ミルクの蓋がうまく開けられずに、飛び散ってしまったのは人生で初めてのことだった。

朝はセブンでパンを買う時がある。グルテンフリー的にはパンはNGと、あのジョコビッチも本の中で書いているが、タンパク質多めならいいかな、とついつい勝手な自論を発動し、カツサンドやハンバーガーを買ってしまう。そして気を紛らわすためにトマトジュースを手に取る。善玉コレステロールを増やし、血圧を下げてくれるらしい。そして意気揚々とレジ袋をオフィスの机で開けたら、そこにトマトジュースは無く、からだすこやか茶があった。トマトジュースが棚にある事を確認して手を伸ばして商品を取ったはずなのに、いつの間にか、からだすこやか茶に変わっていた。自分の意思とは異なる商品を無意識のうちに取り、そのまま買ってしまったのは人生で初めてのことだった。

日常での行動においては慎重に慎重を重ねて生活するようにしている。でもふとした時に今までに経験したことのない出来事が起きる。その時はとても驚き、これが老化なのか、と思うことが多くなった。じゃあ他には何が起こったのかと言われると、実はそれぐらいしかないのだけど、このような人生で初めて起きる失敗という現実に少なからず動揺してしまう。でもこのような失敗があり、その都度後悔する事で、何事につけて慎重にふるまうようになってきたのだと思う。一つ一つの失敗が自分にとっていい薬であったと考えるようにしている。

先日、居酒屋で一人飲んでいた。はじめは瓶ビールだったので、小さいグラス一杯分だけビールを残して次に日本酒を注文した。日本酒を飲んでいる時でも、途中ビールが飲みたくなるので、ビールを残しておくことが多い。刺身が来たので醤油を取ろうと手を伸ばしたら、ビールが入っているグラスがコトンと倒れ、カウンターにビールが流れてしまった。また失敗したと思った。これも人生で初めてのことだった。

女将が布巾を持ってきてくれて「もうお爺ちゃんなんだからー」と笑いながら拭いてくれた。「あーすいません、恐縮です、ごめんなさい」と言いながら、また老いを意識し、ぐったりと虚脱した気分になった。少しふさぎ込んでいるように見えたのか、女将が「気にしない、気にしない。次は良いことが起きるわよ。人生ってそういうもんよ。」と早口でこちらを見ずに言ってくれた。少しホッとした。でも人生を慎重に生きるためのリストには「居酒屋で醤油をとる時は慎重に」とだけは書いておこうと思った。そして黒ビールの小瓶を注文した。

 

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