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本を読むのにベストセラーは避けなければいけないのか:森博嗣「読書の価値」を読む

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 森博嗣氏の「読書の価値」という本に「ベストセラを避けるべき理由」という章がある(森氏はセラと記述)。「一般には理解されないと想像するけれど」と断りを入れてはあるものの、以下のように断言している。

それは、人が読んでいるものを避ける、ということである。みんなが読んでいるもの、売れていると宣伝されているもの、どこかで紹介されたもの、人からすすめられたものを読まない。 書店でも、平積みされ、ポップが立っているような本は無視する。
ー森 博嗣. 読書の価値 (NHK出版新書) 

  売れているベストセラーはおろか、どこかで紹介されたものでも、人から薦められたものでも読まないらしい。それと本屋に行く楽しみの一つである、手書きポップが立っているような平積みされた本においても無視するとまである。

今のところ個人的な今年のベストは順不同で

  • マーダーズ/長浦京
  • 魔眼の匣の殺人/今村昌弘
  • 罪の轍/奥田英朗
  • ノースライト/横山秀夫
  • 欺す衆生/月村了衛
  • 昨日がなければ明日もない/宮部みゆき
  • 帰去来/大沢在昌
  • medium 霊媒探偵城塚翡翠/相沢沙呼
  • Blue/葉真中顕
  • 蟻の棲み家/望月諒子

 あたりが思いつくが、このような本の選択はどうなんだろうか。確かに大ベストセラーと言えるほどもの凄く売れた本は入っていないかもしればいが、やはりエンタメ・ミステリというジャンルの本が多いため、そこそこ売れているだろうし、書評もあふれ、平積みでポップもありそうではある。

 但し私の周りで上記本を読んでいる人はほぼいないため、一応森氏的にはいいのか、いやダメなのか。「キリン解剖記/郡司芽久」も読んで面白かったが、これも売れてるからダメなのか。ダメじゃないのか。

 森博嗣氏はさらにこう続ける。

僕が読むものは、できればまだ誰も読んでいない本であってほしい。それはさすがに無理な話だが、かぎりなくそれに近いものを読みたいのである。
そうすることで、自分が得たものの価値が相対的に高まる。大勢が得たものならば、もう僕が得なくても、社会に満ちているものといえる。
ー森 博嗣. 読書の価値 (NHK出版新書) 

 さすがにここまでくると、ついていけなくなるが、「研究者も作家も、第一に求められるのがオリジナリティ」という結論を書かれてしまうと、「あー僕たちとは違うってことね」と、なんだか急に出口が見えなくなる。ただ実は森氏がこの本で一番言いたいのは「本は自分で選べ」という事みたいなのだ。上記リストの本はもちろん自分で選んでいるが、面白そうな本を日々探し続けることが大切と説く。うん、やってる、やってる、毎日小さい本屋だけど通ってる。よって「じゃあ自分はいいんだな」と納得する。いや納得していいのか。

 その後「教養とは何か」「つまらない本の読み方」という章でもかなり突っ走っているが、最近は出版各社が贈呈で本を送ってくるから小説以外はそれを読むらしく、えっ!そこっ?って感じで、楽しく読めて楽しく突っ込める森博嗣氏の「読書の価値」なのである。

 もう今まで通り自分で普通に本を選んで、普通に読む。それだけである。

読書の価値 (NHK出版新書 547)

読書の価値 (NHK出版新書 547)

  
マーダーズ

マーダーズ

 
蟻の棲み家

蟻の棲み家